エンタメなるままに

最近楽しんだエンタメをつらつらと書いています

「残像に口紅を」を紹介

今回は、「残像に口紅を」をご紹介します。少し前の世代の小説になります。Tiktokで話題になっていたらしいので読んでみました。

オススメする人

  • ファンタジーが好きな人
  • 小説が好きな人

所要時間

5時間

概要

 世界から1文字ずつ文字が消えていく。そんな世界を描いた実験的小説です。物語の内容も文字がなくなった世界でどう生きるかなのですが、作品自体も次第に使える文字がなくなっていく構造になっています。

感想

 ただ小説の物語を読むだけでなく、小説の中で文字が消えていくという実験の一部に自分が組み込まれているような感じがしました。もしかしたら小説の中で筆者の存在を一番想像できる小説かもしれません。何かすごいことをしているかもしれないというワクワク感を感じることができるので、そのワクワク感が好きな人は楽しめるかもしれません。

 しかし、個人的には「非」の印象でした。文字をなくすということを意識しすぎて、物語の後半が使える言葉を並べただけのように感じました。物語の進め方も物語そのものを展開させてるというよりも、使える言葉の中でできる物語を作成したという印象でした。最後の方は、言葉が消えたことも説明できないほど文字が消えていたので、言葉が消えたことよる影響や主人公がどう感じてどんな行動に出たのかが全くわかりませんでした。

 小説内でやろうとしていることは面白いなと思うのですが、それによって小説自体がつまらなくなったり読みにくくなったりしてしまっては本末転倒ではないのかなと個人的に思ってしまいました。

 ファンタジーやワクワク感が好きな人はぜひ読んでみてください!!

 

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「SHE SAID その名を暴け」を紹介

今回は、「SHE SAID その名を暴け」をご紹介します。#Me too運動のきっかけとなった事件を描いたノンフィクション映画です。映画としてのメッセージ性はもちろん、それを伝えるために細部までこだわって作られた素晴らしい作品です。

オススメする人

  • ノンフィクションが好きな人
  • ジャーナリズムが好きな人
  • #Me too運動に関心がある人

所要時間

2時間

概要

 ハリウッドのセクシャルハラスメント問題を明るみにしたニューヨーク・タイムズ社の2人の女性記者の物語です。事件に関しては、実名が使われていて、一部の出演者は本人役で事件の当事者が出演しています。非常にタイムリーで、メッセージ性の強い作品になっています。

感想

 最高の映画でした。映像に残す価値のある映画という感じがしました。本当に全ての人に観て欲しいし、後世に残すべき映画であると思います。今回は、演者と物語の2つの観点から感想をご紹介したいと思います。

 まず、俳優の方々の演技がとてつもなかったです。まず2人の記者の演技です。真実を明らかにしたいという熱量とそれに反するように物事が進展しない苛立ちが画面上からひしひしと伝わってきて、映画にのめり込むことができます。また、被害者の方も事実を明らかにしたいという思いと、諸々のシステムや恐怖によって明らかにできない思いの間で揺れ動く演技も見応え十分でした。出演者一人ひとりが複数の気持ちを抱えていて、この人はこんなキャラクターというある意味映画的な登場人物が1人も出てこないのも印象的でした。出演者の演技のリアルさと実話を扱っているという点で、映画というよりもドキュメンタリーを観ているような気分になります。

 次に物語です。本作で注目すべき点は、記者2人の家庭的な一面が描かれていることです。記者の家庭的な側面を描くことで、作品内に出てくる人間がより人間らしく映っていました。記者自身の家庭的な側面を描くことで、事件に対して淡々とした事実を述べるだけではなく、そこには人間がいて感情があることを強調しているように感じました。1人の記者が産後うつのような状態になり、仕事によって救われるという場面もありました。ここも、記者が仕事として事件に向き合っていて、仕事以外の一面もあるということを視聴者に想像されていました。記者の仕事以外の一面を描くことで、仕事に対する熱量や思いが一層際立っていました。この物語の構成は、実際の事実を人間味を含めた形で伝えるという意味で素晴らしい構成だと思いました。

 オススメです。実際の話とあって、少し生々しい表現もありますが、絶対に観るべき作品の1つだと思います。ぜひ観てください!!!!!!!!!

 

「オッドタクシー」を紹介

今回は、「オッドタクシー」をご紹介します。遅ればせながら観たのでご紹介します。舞台オッドタクシーの紹介も別でしているので、興味があればこちらもご覧ください。

オススメする人

  • ミステリーが好きな人
  • 動物が好きな人
  • アニメが好きな人

所要時間

5時間

概要

 タクシードライバーである小戸川を中心としたミステリーアニメ。女子高生の遺体が見つかった事件が軸となって作品が進んでいくが、その中で別の事件や出来事が絡んでくる。小戸川の周辺のキャラクターたちが各事件に巻き込まれたり、事件を起こしたりと回を増すごとに様々な展開になる。最後は、小戸川地震の物語へとなっていく。

感想

 伏線大事系の作品なので、少しでも興味がある方や作品を全力で楽しみたい方は事前知識を入れずに観ることをオススメします。

 ここから感想をご紹介します。キャラクターに個性があってとても好きでした。アイドルが好きな子、SNSでバズりたい子、なんとなくパッとしないおじさんなど様々な年代の様々な立場のキャラクターが出てきます。また、全員動物の姿をしているので、ビジュアル的にもとても可愛いです。個性豊かなキャラクターと一歩引いた立場の小戸川さんとのタクシー内の会話が、くだらなく、しかし確信を突いているようでとても魅力的でした。私はラジオが好きなのですが、タクシー内の会話はラジオ番組を聴いているような気持ちになりました。

 後、物語もとても魅力的でした。登場人物間のやりとりの中になんとなく違和感になる部分があり、それがある事件の伏線になっています。1話の中でその違和感が何度もあり、続きが気になってしまい、一気に作品を観れてしまいます。作品内で起こる事件も複数あり、途中さすがに事件が起こりすぎではないかなと思ったのですが、最後には全てが1つに集約していく物語が圧巻でした。そして、小戸川さんの真相がとてつもなかったですね。衝撃の最後だったのですが、よくよく思い返してみると全てが繋がっている物語が最高でした。

 映像としても物語としても最高のアニメでした。ぜひご覧ください!!!!!!!!!!

 

 

「さよなら絵梨」を紹介

今回は、「さよなら絵梨」をご紹介します。チェーンソーマンの藤本タツキ先生の作品です。「このマンガがすごい!2023」第2位。マンガ大賞2023の二次選考ノミネート作品です。(2023/03/13時点)

オススメする人

  • 映画が好きな人
  • 裏切られた気分になりたい人

所要時間

0.5時間

概要

 優太は病気の母が亡くなるまでを映像に残し、文化祭で1つの作品にした。作品の最後で母の入院している病院を爆発させた。全校生徒から非難を受けて、自殺しようとしたところで絵梨と出会う。絵梨は優太の作品を褒め、2年後の文化祭でもう一度作品を作り、全校生徒を見返そうと約束する。ある日、絵梨が病気であることを優太は知る。優太は、絵梨を映像に残した作品を2年後の文化祭で上映する。

感想

 今すぐ読んでください。このブログを読んでいる暇があったら読んでください。

とりあえずAmazonのリンクを貼っておきます。

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 冗談はさておき(冗談ではないですが)、本当に面白いです。私は本作を読んで、これ以外にマンガ大賞にふさわしい作品はないと思い、マンガ大賞候補作を読み始めました。

 とにかく、物語が最高に面白いです。これそういう話なのと思わせる場面が、1冊の中に3,4回現れます。伏線を回収した箇所が次の伏線になっていて、読み終わった後は何の話を呼んでいたのか分からなくなります。何度も何度も読めることができ、読むたびに新しい発見や別の視点を見つけることができます。永遠に飽きることがなのではないかと思います。

 物語の構成に加えて、登場人物の心理描写も印象的でした。まず、優太が文化祭のために映像作品を撮る場面が度々あるのですが、どのシーンが映像内の話でどのシーンが登場人物の本音のシーンなのかが分からなくなります。しかし、その中でも登場人物の思いや心情がフランクかつ、丁寧に描かれているのが印象的でした。特に、1回目の文化祭上映の後に優太が自殺をしようとスマホに向かって話すシーンでは、作品を作ることに対する優太の情熱と悔しさがにじみ出ていました。優太は自殺の理由をフランクに語っているように見えるのですが、その内容や決断から優太の作品にかけていた思いやそれが認められなかった気持ちが現れていました。「ルックバック」などもそうなのですが、藤本タツキ先生の作品にかける思いなどが垣間見えた気がしました。このような優太の思いがあったからこそ、絵梨との日々や再度文化祭で上演した後のシーンが生きてくるのだと思いました。

 どの文脈から触れても十二分に楽しめる作品だと思います。最高にオススメです。絶対読んでください!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

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「銀河鉄道の夜」を紹介

今回は、「銀河鉄道の夜」をご紹介します。宮沢賢治の名作です。ヨーロッパ企画さんの「たぶんこれ銀河鉄道の夜」を観に行くにあたり、今回初めて読んでみました。それにしても、「たぶんこれ銀河鉄道の夜」のCMのBGMが好きすぎます。

オススメする人

  • ファンタジーが好きな人
  • 夢が好きな人

所要時間

3時間

概要

 ジョバンニはお祭りの日の夜、1人街を歩いていた。友達とすれ違うなか、母親に頼まれたおつかいに行っていた。ある草原につくと、空から鉄道が走ってきた。鉄道の中には友達のカムパネルラが乗っていた。ジョバンニとカムパネルラは銀河鉄道の不思議な旅を、多彩な登場人物と共に楽しんだ。地上に帰ってきたジョバンニに衝撃の結末が待っていた。

感想

 究極のファンタジー小説だと思いました。宮沢賢治の脳内を見てみたいです。いや、宮沢賢治のラジオが聴いてみたいです。世界観が完成しすぎていて、正直ついていけない、理解できない部分も多々ありました。その中で、「銀河鉄道の夜」はファンタジー小説でもあるし、冒険小説でもあり、終始ワクワクして読むことができました。純粋にファンタジーが好きな方は、その世界観にずっと入り浸れると思いました。

 あと、登場人物が魅力的でした。それぞれエゴイストで自分の欲望を現わにしているような気がしました。でも、我儘な人はいなく、それぞれが自分のやりたいこと・惹かれる点に真っ直ぐであるがために、暖かい空間が車内に溢れていました。

 終始温かい雰囲気でしたが、最後だけ急にミステリーな展開が衝撃的でした。最後の結末があるからこそ、ジョバンニとカムパネルラが体験した経験に意味が出てくるのではないかと思いました。ジョバンニとカムパネルラの理想の世界というか、夢の世界が存分に溢れて具現化したのが、銀河鉄道だったのではないかと思います。

 不朽の名作で、最高のファンタジーである銀河鉄道の夜。ぜひ一度読んでみてください!!!

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「うみべのストーブ 大白小蟹短編集」を紹介

今回は、「うみべのストーブ 大白小蟹短編集」をご紹介します。アトロクや佐久間さんなど名だたる番組や人たちが絶賛していた作品になります。短い短編が7つ入っている形なので、漫画としても読みやすい漫画になっています。

オススメする人

  • 日常が好きな人
  • 短編集が好きな人
  • ファンタジーが好きな人

所要時間

2時間

概要

 タイトル通り大白小蟹先生の短編集になります。別々の話が7つ入っていて、どれも全くジャンルの違う作品になっています。タイトルにも含まれている「うみべのストーブ」は彼女と別れた主人公に対して、部屋の中にあるストーブが話しかけるという話です。ファンタジー感も強い話も多く入っているので、ファンタジー好きの人にもオススメです。

感想

 日常の小さな成長と気づきを丁寧に描いた作品だなと思いました。物語ごとに登場人物と一緒に新しい気づきや成長を感じることができるので、読み進めるにつれて自分の中の何かかが変わっている気がしました。設定としてファンタジー要素が強い作品も多いのですが、フォーカスしている部分は人間の感情などなのですんなりと世界観にのめり込むことができました。今回は素晴らしい短編の中でも「雪を抱く」と「たいせつなしごと」の2つの感想をご紹介します。

 「雪を抱く」は夫婦の妊娠という一見喜ばしい出来事に対して、主人公が抱く感情の描き方がとても印象的でした。体の所有権という文脈から、主人公が妊娠に対して、ひいては自分の人生に対して願望を述べている視点は純粋にすごいという言葉以外思い浮かびませんでした。自分の体を自分だけのものにしたいという願望が、妊娠という出来事によって潰えてしまう悲しさみたいな気持ちがひしひしと伝わってました。少し違う話になるかもしれないのですが、私個人の意見として人生のステージの変化は、人生の主語によって変わってくると思っています。若い頃は、「私」が主語になります。パートナーができると、それが「私たち」に変わります。そして、子どもができると、それが「あなた」に変わります。こうした主語の変化が人生の変化なのではないかなと思っています。その主語が変化するタイミングがとても怖くて、特に「私」を手放す瞬間は人生が自分だけのものではなくなってしまうのではないかという気持ちになります。この感情や考えが、本作の主人公の体に対する考えと通ずる部分があって、個人的にとても刺さる作品でした。

 「たいせつなしごと」はどストレートに刺さる作品でした。本当につまらなくて、しんどくて、どうしようもない毎日に差し込んだ光が忘れられません。面白かったのが、この光が抽象的な光ではなく、物質としての光だったことです。主人公はこの光によって、人生に光が差して人生を変える決断をすることができました。日常の何気ない気づきや視点によって光を見ることができるという点で、とても前向きになれる作品でした。私の人生にも光が見えて欲しいものですね。

 全作品とても面白い作品になっています。本当にオススメの作品です。ぜひ読んでみてください!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

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「そして僕は途方に暮れる」を紹介

今回は、「そして僕は途方に暮れる」をご紹介します。藤ヶ谷さん主演の舞台が映画化されたのが本作です。主演は、舞台同様藤ヶ谷さんです。言い方が少し悪いですが、全くジャニーズ感のない藤ヶ谷さんが見どころの1つです。

オススメする人

  • 何となくやる気がない人
  • 真面目に生きている人

所要時間

2時間

概要

 フリーターで怠惰な生活を送る菅原裕一。彼は彼女・友達・先輩・家族、自分の身のわりの様々な人の家に居候をして、日々を暮らしていた。しかし、どの家も1週間ほどで家主から説教をくらい、それをキッカケに菅原は家から逃げてしまう。最後に行く宛のなくなった菅原は、ある人物と出会い自分の生活を見つめ直すようになる。そして、正しく生きようと前を向いた菅原にある出来事が起こる。

感想

 物語の内容としては、主人公の菅原に終始イライラする作品でした。もちろんそれが作品のみどころでもあるので、イライラしている自分を楽しむという楽しみ方は1つあるかもしれません。ただ、そんな自堕落な主人公なので、最後の出来事とそれに対する菅原の向き合い方にはイマイチ感情移入できませんでした。そもそも、そのきっかけを作ったのは菅原自身だしなと思ってしまい、自業自得感が否めませんでした。

 作品内の表現は興味深い点がいくつかありました。その中でも、菅原の心の状態を、菅原含めた人間の感情の出力と天気の表現で表しているように感じました。物語の前半、つまり菅原が自堕落な生活を送っていて嫌なことがあるとすぐに逃げる状態の時は、菅原自身ははもちろん彼女や周りの友達も、急に100%の感情で戸惑ったり、怒ったりする箇所が多々観られました。また、雨や雪などの天気の表現も、土砂降りや吹雪など極端な天気の表現が見られました。これは菅原の一種の衝動的に物事から逃げる一面を、作品全体の表現を0か100で表すことで表現しているのではないかなと思いました。その後、菅原が自分の生活を見つめ直すシーンがあるのですが、その後からは人間の感情が徐々に表に現れてくる表現が散見されるようになった気がします。特に印象的であったのが、前田敦子さん演じる恋人がある話をするシーンです。このシーンでは、人間の感情が0から100までグラデーションのように表に出てくるように感じました。

 全体的に作品としていい意味でイライラする場面が多い作品ですが、今無気力な人や逆に一生懸命生きていると感じている人には新しい発見があるかもしれません。興味があればぜひご覧ください!!!!!!!!!