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「アクトオブキリング」を紹介

今回は、「アクトオブキリング」をご紹介します。インドネシアの大量虐殺をテーマにしたドキュメンタリーです。大量虐殺の加害者をメインとした作品であり、最後はとても考えさせられるものになります。

オススメする人

  • ドキュメンタリーが好きな人
  • 教科書に載らない歴史が好きな人

所要時間

2時間

概要

 インドネシアで実際に起こった大量虐殺をテーマとしたドキュメンタリー作品です。大量虐殺の加害者に対して、自分たちの栄光を映画として作品にして欲しいと依頼した作品です。大量虐殺のシーンを撮影するにつれて、自分たちが犯したことの重大さを自らの身体をもって体感していく作品です。

感想

 戦争や虐殺のドキュメンタリーでは珍しい着眼点だと思いました。被害者など巻き込まれた側を追うことで当時の実態や悲惨さを伝えてくれるドキュメンタリーが一般的ななかで、虐殺の加害者を加害者っぽく描かない伝え方がとても新鮮でした。今回は、特に物語全体の視点と最後のシーンについて感想をご紹介したいと思います。

 まず、物語全体の視点についてです。概要でも述べたように、本作は大量虐殺の加害者がメインの登場人物です。しかも、彼らは当時の出来事を栄光の日々であるかのように語り始めます。ここまで聞くと、彼らは圧倒的悪のように聞こえるかもしれませんが、作品内の映り方はそうではありませんでした。虐殺が認められる社会やそれを誇りに思ってしまう当事者たちの気持ちがひしひしと伝わってきました。ジャンルは全く違うのですが、一種の共感のような感情も抱きました。この、加害者にならなければいけなかった人々から見た虐殺という物語全体の視点がとても新鮮で、学びになる点がたくさんありました。

 2つ目は、最後のシーンです。ここからネタバレを含みますので、その辺気になる方はお気をつけ下さい。最後の吐くことすら許されないような、喉元あたりで何かが渦巻いているシーンは個人的には衝撃的なシーンでした。虐殺を撮影する中で出演者である虐殺加害者自身は、自分が行ったことに対する被害者の恐怖を身をもって体験します。その経験を通じて、自分が行ったことの本当の意味を知ることになります。その結論が個人的には、自分が行ったことへの反省というよりも自分自身に恐怖を感じているように思えました。自分が行ったことを声高々に自慢していたことへの恐怖、虐殺を映像に残そうとした自分への恐怖。そのような恐怖を感じ、最後の吐くに吐けないシーンに繋がったのではないかと思いました。やってはいけないこと、歴史的過ちなどをすべて飛び越えた、1人間として虐殺とどう関わってきたのかというリアルが本作では描かれている気がしました。歴史を学ぶ私たちはそのようなリアルを学んでいかなければいけないと思えました。

 けして明るい映画ではなく、なんとも言えない気持ちになる映画ですが絶対に観るべき作品だと思います。オススメです。