エンタメなるままに

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「イニシェリン島の精霊」を紹介

今回は、「イニシェリン島の精霊」をご紹介します。個人的に今まで観たことのない映画のジャンルでしたので、ある意味では楽しんで観ることができました。

オススメする人

  • スローテンポで物語が進んでいくのが好きな人
  • おじさんが人

所要時間

2時間

概要

 アイルランド内戦下のアイルランドの孤島であるイニシェリン島での出来事を描いた作品。パードリックはある日、友人のコルムに絶交を言い渡されてしまう。原因がわからないパードリックはコルムに歩み寄ろうとするが、コルムは徹底的にそれを拒否する。そして、コルム・パードリック共に超えてはいけない一線を超えてしまう。

感想

 物語の進め方と全体を包み込む比喩的な表現がとても好きでした。今回はその2点について感想をご紹介しようと思います。

 まず、比喩的な表現からです。本作は一見すると、小さな島でのおじさんたちの小競り合いです。おじさんたちがぱちキレて自分の指を切ったり、人の家を燃やしたりする作品です。しかし、その小競り合いがアイルランド内戦や、もっと大きくいうと争いそのものを表現しているように受け取りました。争いが小さなすれ違いやある日突然訪れる違和感から始まる様子が、コルムがパードリックに抱いた違和感そして絶交したという行動から見ることができました。そして、そのすれ違いをなんとか会話などで解消しようとする様子を、パードリックがコルムに歩み寄ろうとする姿勢から感じることができます。そして、コルムが自分の指を切るという一種の一線を超えてしまう行為が、人(自分を含める)を傷つけることによって物事を解決しようとするつまり暴力に走ることを表現しているように感じました。そこからパードリックも直接的な攻撃をするシーンが増えました。そして、最終的にパードリックとコルムの小競り合いが終わらない表現をすることで、争いはなくならないことを比喩しているように思いました。この表面的にはおじさんたちの小競り合いなんだけれども、その過程は世の中の争いを表現している比喩的な表現がとても好きでした。

 2つ目は、物語の進め方です。1つ目の感想と絡んでくるのですが、本作品はパードリックとコルムの関係を争いの関係と比喩づけています。その物語の進め方がとても好きでした。具体的には、物語の展開が進むタイミングでアイルランド内戦の実際の銃声が聞こえてきます。最初の銃声は物語の最初、コルムの態度が変わる場面です。ここからいわゆる争いの火蓋が切られたことになります。そして、次の銃声はパードリックのロバが死んだ後です。ここからパードリックが直接的にコルムに対して敵意を向けます。これは争いの条件が敵味方ともに成立したことになります。そして、最後のシーンは逆に銃声が鳴らないシーンとなります。これは個人的に休戦を表しているのではないかと思いました。ここで初めてパードリックとコルムは正面から面と向かって話すのですが、しかしもう争いは止められなくてこの後争いが続いていくのではないかと思いました。

 この作品は、一見小さな街の精神的に見苦しいおじさんたちの小競り合いなのですが、それが示そうとしていることを考えながら観るのがとても楽しかったです。

オススメです!!!!!!!!!!!