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「地図と拳」を紹介

今回は、「地図と拳」をご紹介します。2023年の直木賞作品です。作者は、「君のクイズ」の作者でもある小川哲さんです。「君のクイズ」はこちらでご紹介しているので、ぜひこちらも合わせて読んでみてください。

オススメする人

  • 歴史小説が好きな人
  • ファンタジーが好きな人
  • 空想物語が好きな人

所要時間

2週間

概要

 日露戦争から第二次世界大戦終焉までの満洲を舞台とした歴史小説です。満洲の架空の都市を中心として、そこに関わる人物の人生を描いています。1つの都市が開拓されていく様子を地図が作成される様子に例え、都市が破壊される様子を拳で壊す様子に例えた長編ファンタジー歴史小説です。

感想

 まず、小説家という存在の凄さを痛感する作品です。本書は600ページ超えの超大作です。架空の都市や人物を実際にあった出来事の中に落とし込んで、詳細な設定を作り上げていく作業には感服以外の言葉が思い当たりません。月並みですが、本当に小川先生の脳内を探検して見たいと思いました。今回はマクロな視点とミクロな視点で感想をご紹介したいと思います。

 まずはマクロな視点です。本書は満洲の架空の都市を舞台に物語が繰り広げられます。都市が中心で物語が進むことが面白いなと思いました。場所は一緒なのに、時代が進むごとにその都市の主人公が変わっていき、主人公の気持ちややりたいことを反映する形で都市が変わっていく。この移り変わりの様を、ある種の神目線から俯瞰しているような気持ちになれます。よく物語の登場人物に感情移入してしまうことはありますが、都市に感情移入するという奇妙でもあり面白い体験が本書には待っています。

 次はミクロな視点です。具体的に言うと、地図の話です。本書のタイトルにも入っている地図ですが、本書は地図を様々な意味で取ることができます。読んだ方それぞれの受け取り方があると思うので、ぜひ楽しんでみてください。その中でも今回は文字通りの地図の視点から感想を話したいと思います。地図というのは面白いですね。地図というのは何の為の地図なのかによって、その内容そのものが変わってしまうのですね。スマホで見る地図が世界の全てを表しているように見えますが、実際にはそれも世界の一部を切り取っただけに過ぎないということが本書を通じてよくわかります。本書の中で、地図を作る人たちが何人か出てくるのですが、その人たちが何のために地図を作っているのか。その思いが前述した時代によって移り変わっていく様を地図というものを通じて感じることができます。

 少し長めの小説になりますが、ぜひ時間をとってゆっくりその世界観を楽しんでください。おすすめです!!!!!!!!!

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