「ジャクソンひとり」を紹介
今回は、「ジャクソンひとり」をご紹介します。芥川賞候補作です。ずどっと来る小説です。小説自体は短い小説なので、スラスラと読める1冊になります。
オススメする人
- マジョリティ/マイノリティに関心がある人
- 短い時間に本が読みたい人
所要時間
1日
概要
ある日、ジャクソンが着ていたTシャツについていたQRコードが読み取られてしまう。そこにはジャクソンに似ているブラックミックスの男性が性的暴行を受けている映像が流れていた。ジャクソンの周りの人は、映像の男性をジャクソンだと思い込んだ。しかし、ジャクソン以外にも同じように周りの人から「この映像はお前」だと言われるブラックミックスの男が3人いた。ジャクソンは、その3人と手を組み、復讐を計画する。
感想
正直私は本書を当事者としては読めませんでした。むしろ、自分とは違う世界で起こっていることのようでした。ただ、これは小説の中だけの話ではなく、実際に起こっていることなのだと思わなければいけないと感じる1冊でした。
本書で特に印象に残っているのは、ジャクソンたちが計画した復讐の方法です。ネタバレになるので詳細は控えますが、一種の自虐というか自分たちの現状を受け入れてそれを逆手にとった方法になっています。その方法自体が、現実の現状を表しているように見えてとても悲しい気持ちになりました。確かに一時的な復讐はできているかもしれないし、自分たちを貶してきた人を一泡蒸しているかもしれないけれど、本質的な問題は何も解決していない。そんなことの繰り返しなのかもしれないと思わせてしまうような内容でした。